神道の一霊四魂とヨーガの対応

2023-04-01 記載
トピック:スピリチュアル: 瞑想録

神道では系統によって解釈が異なることが前提ですが、一つの例として山蔭神道では以下のように説明されています。

大環宇太霊(なおひのみたま)
→ (無の動き)法則活動
  ・宇宙創造・生成化育の法則
  ・四季循環・公転・自転の法則
→ (有の働き)現象活動
  ・日月星辰の映現
  ・森羅万象の映現
「己貴秘伝 P50」

・荒魂(あらみたま)勇気、建設、破壊。(肉体的な)生命。理性的エネルギー。
・和魂(にぎみたま)制御、推進。血液、内蔵器官
・幸魂(さちみたま)調和、建設、慈愛。感情的エネルギー。神経系統
・奇魂(くしみたま)正義、希望、思考。骨や筋肉
「神道の現代的解義(山蔭 基央 著)P137」

・環境的なものを荒魂(あらみたま)的
・身体的なものを和魂(にぎみたま)的
・心因的なものを幸魂(さちみたま)的
・神霊的なものを奇魂(くしみたま)的
「神道の現代的解義(山蔭 基央 著)P272」

直霊(なおひ、一霊)は2つの動きに分かれ、
→ 無の動き
 → 奇魂(くしみたま) 生命の働き、生命の根源
 → 幸魂(さちみたま) 調和と変化、感情、美。
→ 有の動き
 → 和魂(にぎみたま)エネルギー、内臓、ホルモンを司る働き。幽魂(ぬるみたま)、いわゆる幽霊にも相当。
 → 荒魂(あらみたま) 肉体の外的行動のエネルギー。神経、筋肉、骨など。
「神道の現代的解義(山蔭 基央 著)P386」

としています。

これらは、ヨーガの5つのコーシャのようにも見えますが精神面という側面も持ち、おそらくは、両方の側面があるのではないかと思います。精神面から四霊の分類は以下になります。

・荒魂(あらみたま)固く硬まる心の働きであり、革新意識であり、破壊意識であり、直感力。表現意欲。
・和魂(にぎみたま)柔軟な心。停滞を求める怠心。感情的な心情。推進性の意欲。
・幸魂(さちみたま)知覚、情欲、愛情、調和意識、究明を求める感情。
・奇魂(くしみたま)神秘を求める心、思考思索の創造意識、冷静な統覚力、直感力、推進力。
「己貴秘伝 P54」

同著者の「神道入門2」P225には図が掲載されており、肉体に近い方から順番に以下になります。

・荒魂(あらみたま)
・和魂(にぎみたま)
・幸魂(さちみたま)
・奇魂(くしみたま)
・直日霊(なおひのみたま)

同著者が確か他の書物でこれらとヨーガの5つのコーシャ(鞘)との対応(の解釈)を掲載していたかと思うのですが、今手元にある同著者の書籍では記述を確認できませんでした。

似たようなものとして、参考までに、著者とは別の教授の論文の引用が同書P128に掲載されております。

・荒魂(あらみたま) 肉体を構成する
・和魂(にぎみたま) 幽体、アストラル体
これら2つが生きている肉体を構成する。

・幸魂(さちみたま)と奇魂(くしみたま)が意識体(コーザル体、原因体)
・奇魂(くしみたま)と直日霊(なおひのみたま)が霊

これによると、奇魂(くしみたま)が2つ重なっていますね。

論文を引用している、というところを見ると、神道の四魂とヨーガの5つのコーシャ(鞘)との対応は通説ではなく著者の個人的な解釈なのかなと思います。そもそも一霊四魂にしても神道の流派によって解釈が異なるそうですので、通説というものはないのかもしれません。

それぞれの説明だけを読んで個人的な解釈を一応付け加えておきます。(もちろん通説ではありません)

・荒魂(あらみたま)
 ヨーガのアンナマヤ・コーシャ(食物鞘)
・和魂(にぎみたま)
 ヨーガのプラーナマヤ・コーシャ(生気鞘)
・幸魂(さちみたま)
 ヨーガのマノマヤ・コーシャ(意思鞘)
 ヨーガのヴィッニャーナマヤ・コーシャ(知性鞘)
・奇魂(くしみたま)
 ヨーガのアーナンダマヤ・コーシャ(至福鞘)
・直日霊(なおひのみたま)
 ヨーガ(あるいはヴェーダンタの)アートマン(真我)

単純に5つのコーシャ(鞘)をそれぞれに当てはめてしまうと意味的に合わないため、ある程度の類似性を考えますとこのような対応になります。もちろん流派が違いますのでそれぞれの定義は違うのですが、割と似たようなものであるとざっくりと捉えると全体像が掴みやすいように思います。

この種のお話は定説はあるようでいて細かなところが同じ流派においても異なっていて、なかなか解釈が難しいところがあるように思います。

その要因としては、四霊が単なる物質的な粗大さと微細さという分類だけでなく、質的な違いをも内包しているからだと思います。上図のような微細と粗大という分類も確かに正しくもあるのですが、それだけでなく、精神面から見て上記のようにそれぞれに質が対応付けられるということは、質と粗大微細のお話が混在しているから理解が難しくなっているように思われます。

このように、それぞれの要素が何に対応しているかの通説はあるようでいてないのですが、精神と物質、という分類に関しては以下のように明確のように思います。

プルシャは直日霊(なおひのみたま)に当たり、プラクリティは四霊に当る。 「ヨガと神道」P363

プルシャはヨーガのサンキャ派でいう純粋精神で、それと対になっているのが純粋物質のプラクリティですので、プルシャは神霊とも訳されますけどサンスクリットの意味としては「人」のことで、どちらも精神(神霊)と物質とが常に一緒にいて、ヨーガも神道も似通った思想体系にあると言えると思います。

又、同著者が近代的な心霊主義や神智学あるいはスピリチュアルな言い方との対応を記載しています。

・荒魂(あらみたま)
 肉体、エーテル体
・和魂(にぎみたま)
 アストラル体、メンタル体。幽体。半物質的心霊体
・幸魂(さちみたま)と奇魂(くしみたま)
 コーザル体、霊体。意識的心霊体。物質の領域に属さない
「ヨガと神道」P516より

コーザル体(カーラナ)を物質とみなすかどうかは流派によって多少異なっていて、本山博先生はカーラナは物質、としていますが、ここでは物質ではない、としています。ヨーガ的にプラクリティは物質ですのでプラクリティが四霊に掃討するなら幸霊や奇霊も物質の筈ですが、この辺りは微妙な境目でわかりにくいところなのかなと思います。私はコーザル体は本山博先生の解釈に従って物質と解釈しています。

ヨーガの5つのコーシャやヨーガ・スートラのサンキャ派のプルシャとプラクリティ、そしてスピリチュアルと四霊との対応を見ることで神道の四霊の思想がそれらとそうは変わらず、共通点が多いことが見て取れるかと思います。