身内を殺して、どうして幸せになれるのか
身体の動揺、不吉な前兆、殺しても善はないという思い、意味を失った勝利や王国、そして一族を滅ぼす罪。ここまで積み重ねた理由を受けて、アルジュナは「それゆえ」と一度はっきりした結論を出します。
親族であるドリタラーシュトラの息子たちを殺すべきではない。自分の身内を殺して、どうして幸せになれるのか。この世でも来世でも、近しい人々を殺して幸福を得ることはできないと彼は考えます。これはアルジュナ側の暫定的な結論であり、ここから彼は一族が滅びることで生じる問題をさらに詳しく語っていきます。
ギータプレス版からの日本語訳――第1章第37節「自分の親族を殺してどうして幸せになれるのか」
tasmānnārhā vayaṁ hantuṁ dhārtarāṣṭrānsvabāndhavān |
svajanaṁ hi kathaṁ hatvā sukhinaḥ syāma mādhava || 37 ||
語句
tasmāt は「それゆえに」。
na arhāḥ vayam hantum は、
「私たちは殺すべきではない」。
dhārtarāṣṭrān は「ドリタラーシュトラの息子たち」。
svabāndhavān は「私たちの親族」。
svajanam は「自分たちの身内」。
hi は「なぜなら」。
katham hatvā sukhinaḥ syāma は、
「殺してどうして幸せでいられるだろうか」。
mādhava はクリシュナへの呼びかけです。
訳
「それゆえ、 マーダヴァよ、 私たちは自分たちの親族であるドリタラーシュトラの息子たちを、 殺すべきではありません。
なぜなら、 自分の身内を殺して、 どうして私たちは幸せになれるでしょうか。」
注釈訳
この節の初めに tasmāt、
すなわち「それゆえ」という語を用いることで、
アルジュナは次のことを言おうとしている。
自分が陥っている悲しい精神的・身体的状態を考え、 さらに戦争に入ることに反対して自分が述べてきた理由を考え、 そして心の中に湧き上がるその他の思いを考えるなら、 彼ははっきりとこう判断している。
パーンダヴァたちが、 ドゥルヨーダナやカウラヴァ軍のその他の親族を殺すことは、 まったくふさわしくない。
この世においても来世においても、 近しい人々を殺すことによって、 パーンダヴァたちが何らかの幸福を得る可能性は、 わずかにもない。
だから彼は、 戦いたくないと言ったのである。