最強の戦士が、自分の弓を持てなくなる
アルジュナの動揺はさらに深まり、ガーンディーヴァの弓が手から滑り落ちます。皮膚は焼けるように感じ、頭が回り、立っていることさえできません。精神的な苦しみが、身体の限界として現れています。
ガーンディーヴァは、アルジュナが神々や人間を征服した天上の弓であり、最強の戦士としての彼を象徴する武器です。その弓さえ手に保てないことは、技術や気力で立て直せる段階をすでに超えたことを示します。戦争の結果を思う心が、戦士としての構えそのものを崩してしまったのです。
ギータプレス版からの日本語訳――第1章第30節「ガーンディーヴァが手から滑り落ちる」
gāṇḍīvaṁ sraṁsate hastāttvakcaiva paridahyate |
na ca śaknomyavasthātuṁ bhramatīva ca me manaḥ || 30 ||
語句
gāṇḍīvam は、アルジュナの弓ガーンディーヴァ。
sraṁsate は「滑り落ちる」。
hastāt は「手から」。
tvak は「皮膚」。
paridahyate は「全身が焼けるように感じる」。
na ca śaknomi avasthātum は、
「立っていることさえできない」。
bhramati iva me manaḥ は、
「私の心、または頭が回るようである」です。
訳
「ガーンディーヴァの弓が私の手から滑り落ちます。
私の皮膚も全身が焼けるようです。
頭がぐるぐる回るようで、 私はもうまっすぐ立っていることもできません。」
注釈訳
憐れみによる心のやわらかさによって、 アルジュナは非常に嘆かわしく、 苦しい状態に陥った。
彼自身はその状態をこう説明した。
自分の手足はしびれ、 完全に力を失っている。
ガーンディーヴァの弓に弦を張って扱うどころか、 手に持っていることさえできない。
実際に手から落ちていくように感じられる。
戦争の恐ろしい結果を思ったことで、 彼の心はほとんど煮え立つ釜のようになった。
そのため、 皮膚そのものが焼けるように感じられた。
心の苦悶によって、 彼の心は非常に落ち着きを失い、 一瞬たりとも何かに集中することができなくなった。
頭はめまいを起こし、 意識を失って地面に倒れてしまいそうに感じられたのである。
ガーンディーヴァについて
アルジュナの持つガーンディーヴァの弓は、 天上の武器であった。
それは椰子の木ほどの大きさを持つとされる。
アルジュナは、 宦官ブリハンナラーに変装していたとき、 ウッタラ王子にこの弓を次のように説明した。
これは世界に名高いアルジュナの弓である。
全体に金が張られ、 すべての武器の中で最上であり、 十万の武器に匹敵する力を持つ。
アルジュナはこの弓によって、 神々と人間を征服した。
この驚くべき、 多彩で、 独特で、 繊細で、 巨大な弓は、 神々、 悪魔たち、 ガンダルヴァたちによって長く崇められてきた。
この超天上的な弓は、 ブラフマーに千年、 プラジャーパティに五百三年、 インドラに八十五年、 月神に五百年、 水の神ヴァルナに百年保たれていた。
アルジュナは、 カーンダヴァの森を火神に焼き尽くさせたことで火神を喜ばせ、 その火神の依頼によって、 ヴァルナからこの弓を得たのである。