心の動揺を、身体が先に語り始める
アルジュナはクリシュナに、自分の身体に起きていることを語ります。手足から力が抜け、口が渇き、体が震え、毛が逆立つ。彼の苦しみは、頭の中の考えにとどまらず、はっきりした身体の反応として現れました。
若者も老人も、親族も友人も、目の前にいる人々が死へ向かっている。その現実を一度に受け止めたことで、深い恐れと憐れみが彼を襲います。戦士として立ち続けようとしても、身体のほうがすでに限界を知らせている。アルジュナの内側の崩れが、外からも見えるものになった場面です。
ギータプレス版からの日本語訳――第1章第28節後半〜第29節「身体に現れた動揺」
arjuna uvāca |
dṛṣṭvemaṁ svajanaṁ kṛṣṇa yuyutsuṁ samupasthitam || 28 ||
sīdanti mama gātrāṇi mukhaṁ ca pariśuṣyati |
vepathuśca śarīre me romaharṣaśca jāyate || 29 ||
語句
arjuna uvāca は「アルジュナは言った」。
dṛṣṭvā は「見て」。
imam svajanam は「これらの身内の者たち」。
kṛṣṇa は「クリシュナよ」という呼びかけ。
yuyutsum samupasthitam は、
「戦おうとして布陣している」。
sīdanti mama gātrāṇi は、
「私の手足が力を失う」。
mukhaṁ ca pariśuṣyati は、
「私の口が渇く」。
vepathuḥ śarīre me は、
「私の体に震えが走る」。
romaharṣaḥ jāyate は、
「毛が逆立つ」「身の毛がよだつ」です。
訳
アルジュナは言った。
「クリシュナよ、 戦おうとして布陣しているこれらの身内の者たちを見ると、 私の手足は力を失います。
口は渇き、 体には震えが走り、 毛が逆立ちます。」
注釈訳
この言葉によってアルジュナは、 大きな戦争における無差別な殺戮の結果が、 両方の側にとってどれほど恐ろしいものになるかを示そうとしている。
彼は、 自分の目の前にいる若い戦士も年老いた戦士も、 親しいおじたちも、 いとこたちも、 親族も友人も、 みな死の口へ歩み入ろうとしているのだと知っていた。
この事実を一度に悟ったことによって、 彼の心には感傷的な哀れみが生じた。
心には深い恐れと憐れみが起こった。
そしてそれらは身体に反応を起こし、 手足の震え、 毛が逆立つこととして現れた。