戦争の結果ではなく、自分たちの動機を見つめる
ここまでアルジュナは、戦争が一族や社会にもたらす破壊を語ってきました。しかし第45節では、その視線が外側から自分たちの内側へ向きます。「ああ、何ということか」と嘆き、自分たちは大きな罪を犯そうとしていると認めます。
本来は徳と知性を備えた者として知られるパーンダヴァたちが、王位と享楽への欲望から親族を殺そうとしているのではないか。アルジュナは戦う理由そのものを「欲望」と見なし始めます。その瞬間、彼の中で戦争は正義のための行為ではなく、自分たちが関わろうとしている大罪に見えてくるのです。
ギータプレス版からの日本語訳――第1章第45節「王位と快楽への欲望による大罪」
aho bata mahat pāpaṁ kartuṁ vyavasitā vayam |
yad rājyasukhalobhena hantuṁ svajanam udyatāḥ || 45 ||
語句
aho は驚きを示す不変化詞です。
bata は深い悲しみを表します。
mahat pāpam は「大きな罪」。
kartuṁ vyavasitā vayam は「私たちはそれを犯そうと心を決めてしまった」。
rājya-sukha-lobhena は「王位と享楽への欲望によって」。
hantuṁ svajanam udyatāḥ は「自分の親族を殺そうとしている」です。
訳
「ああ、何ということか。 私たちは大きな罪を犯そうと心を決めてしまった。 王位と享楽への欲望のために、 自分自身の親族を殺そうとしているのだから。」
注釈訳
不変化詞 aho は驚きを示し、
bata は大きな悲しみを表す。
この二つを用いることで、 アルジュナは次のことを示そうとしている。
パーンダヴァたちは、 世界中から徳ある者、 知性ある者と見なされていた。
その彼らが罪の行為に関わることは、 決してふさわしいことではなかった。
それにもかかわらず、 彼らまでもがこの恐ろしい罪を犯そうと決意してしまった。
それは極めて嘆かわしいことであった。
アルジュナは、 この大きな罪の動機として、 王位と享楽への欲望を挙げる。
それによって彼は、 そのような動機で戦争に加わることは、 彼らにとって大きな過ちであると示している。