32.そして高額セミナーが成立する
ここに商業化が加わると、非常に興味深いビジネスモデルが成立する。まず、「あなたがうまくいかないのは努力が足りないからではありません」と言う。これは疲れている人にとって魅力的なメッセージである。次に、「むしろ頑張っているからうまくいかない」と言う。そして、「あなたには受け取れないブロックがあります」と説明する。
そのブロックは外部から測定できない。だから、セミナー、個人セッション、オンラインサロン、上級講座、認定コース、ヒーリング、コーチングなどによって「外す」ことができると説明する。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 講座を受けるという行動と、期待する結果が得られるかどうかは別の問題である 高額な特別講座を受ければ、早く確実に救われると考える
33.何も変わらなくても商品は売り続けられる
参加者が講座を受ける。しかし現実が変わらない。普通の商品なら、「効果がなかった」となる。しかし自己封鎖型のスピリチュアルでは、「まだ深いブロックがあります」と言える。
すると次の商品が成立する。
初級講座 → 上級講座 → 個人セッション → 認定講師コース
という階段を作ることもできる。参加者は、「ここまでお金を使ったのだから、何か意味があるはずだ」と考えやすくなる。ここにはサンクコストの問題も加わる。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 結果の未達を追加課題に変えると、教えの有効性を検証しないまま購入が続く 結果が出なくても、次の商品を買えば今度こそ変われると考える
34.「働かなくていい」を売る人は働いている
そして、このビジネスには非常に面白い逆説がある。「働かなくても豊かになれる」と教えている講師自身は、SNSを更新し、動画を作り、本を書き、講演やイベントを開催する。さらに、広告を出し、顧客を管理し、決済システムを運営している。つまり、かなり働いている。
その収入源は、「働かなくても豊かになりたい」と考える参加者が支払う受講料である。極端に言えば、「働かなくてもいい方法」を販売することを仕事にしているという逆説が成立する。
これは単なる皮肉ではなく、この思想を理解するうえで重要である。なぜなら講師自身の成功が、「この思想を実践すれば豊かになれる」という証拠として提示されることがあるからだ。しかし実際には、その豊かさが、思想を実践した結果なのか、思想を販売した結果なのかを区別する必要がある。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 講師は教えの販売・広報・運営という労働によって収入を得ている 講師の豊かさを、販売活動ではなく「働かない教え」の成果だと考える
35.「引き寄せで成功した」のか「引き寄せを売って成功した」のか
たとえば、ある人物が、「会社を辞め、宇宙に任せたら年収が何倍にもなった」と語ったとする。それだけ聞けば、「引き寄せによって成功した」ように見える。しかし収入の内訳を見ると、引き寄せセミナー、スピリチュアルカウンセリング、オンラインサロン、書籍、講演、認定講師制度などから得られている場合がある。その場合、少なくとも経済学的には、「引き寄せを実践したから富が生まれた」だけではなく、「引き寄せという商品に需要があったので、それを販売して富が生まれた」という説明が可能である。
両者はまったく違う。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 教説を実践した成果と、教説を販売して得た売上は区別する必要がある 教説販売の売上を、教えそのものが正しい成功例だと考える
36.ゴールドラッシュで最も確実に儲かるのは誰か
これは古典的なゴールドラッシュの話に少し似ている。金を掘り当てる人がいる。しかし全員が金を掘り当てられるわけではない。一方、つるはし、シャベル、衣服、宿泊、輸送などを金鉱掘りに販売する商売は成立する。同じように、「豊かさを引き寄せたい」という人が大量に存在すれば、実際に全員が豊かになるかどうかとは別に、「豊かさを引き寄せる方法」を販売する市場は成立する。
この二つを混同しないことが重要である。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 成功法の販売収入と、購入者がその方法で成功することは別の問題である 成功法を買えば、自分も同じように大きな利益を得られると考える